銀座アスターの味を、おうちの食卓で!
~「新商品」「新工房」企画・開発プロジェクト~
近年、人々のライフスタイルは猛スピードで変化を続け、飲食業界に対するニーズもますます多様化し続けています。レストラン事業・デリカ事業の2軸で成長を続けてきた銀座アスターも、時代のニーズにお応えするために、さらなる事業軸を生み出すことになりました。
I.Kさん
営業推進グループ
グループマネージャー
調理部門担当
2001年入社
2001年、調理職入社。8店舗で経験を重ね、2019年に銀座アスタープロデュースの新業態店舗『Gu-O』の調理長に就任する。2020年より本部調理担当として調理教育や冷蔵・冷凍商品等の企画・開発に携わる。
※プライバシー保護のため姓名はイニシャルで表記しております。
※本インタビュー記事は2024年1月現在の内容です。
2020年、『テイク&デリ』をキーワードとした新プロジェクトがスタートを切りました。新商品開発でもあり、新拠点開発でもあるという、前代未聞の挑戦。もちろん、一筋縄ではいきませんでした。
近年、外で食べる「外食」から、おうちで食べる「中食」へとニーズを拡大してきた飲食産業。2020年、新型コロナ禍の影響を受け、この流れはさらに加速することになりました。これまでレストラン事業とデリカ事業を展開してきた銀座アスターも、新たな道を模索することになりました。これまでの銀座アスターのデリカショップは、レストランの味をご家庭で』というコンセプトでデリカショップの展開をしていました。しかし、コロナ禍でお店にご来店されるのが難しくなったお客様が大勢いらしたことを背景に、『お客様にレストランに足を運んでいただくのではなく、私たちがレストランの味をご家庭に届ける』というコンセプトで新商品開発が始まったのです。そんなコンセプトでスタートを切ったプロジェクトは、商品の企画・開発にとどまらない大規模プロジェクトへと発展していきました。企画・開発担当者は、商品だけではなく、商品を作るための新工房の建設プロジェクトまでも手掛けることになったのです。
匠工房
プロジェクトはまず、真空パックの冷蔵品の検討からスタートしました。手始めに酢豚や海老のチリソース煮といった人気メニューを真空パックし、冷やして温め直して実食するというサイクルを繰り返していったのです。
スタートしたプロジェクトは、いきなり大きな壁にぶつかりました。真空パックにしたお料理は、温め直すと味や食感が変化してしまったのです。例えば、酢豚のお肉は温めすぎるとボソボソになってしまう。海老のチリソース煮の海老はパサパサになってしまう。野菜はクタクタになってしまう…。
まずは、温かいものを温かいままお出しするというレストランのセオリーから離れ、食材やレシピを1から見直すことにしました。いろいろな食材を片っ端から試して、再加熱しても美味しくいただけるようにトライ&エラーを重ねていきました。たれやソースの材料や配合、火を入れる時間や入れ方なども、数え切れないほど試しましたね。
従来の銀座アスターには、冷蔵品や冷凍品を作るノウハウはほぼ存在しませんでした。企画・開発担当者は様々なメーカーやショップの冷蔵・冷凍食品を研究し、製造機器の展示会などにも出向いて情報を収集していきました。
真空パックでの挑戦を半年ほど重ね、2021年の初め頃には、いくつかの新商品がデリカショップの店頭に並ぶまでになりました。ここで、プロジェクトが新たなフェーズに入ります。きっかけとなったのは『急速凍結機』という、食材や食品の美味しさを保ちながら冷凍できる機械でした。冷蔵品だけでは限界がありましたが、冷凍品を視野に入れることで可能性がぐんと広がったのです。とはいえ、急速凍結機の導入にはかなりのコストがかかります。そこで、企画・開発担当者はいくつものメーカーを検討し、社内でプレゼンを行いました。その結果、ついに役員たちも同行し、あるメーカーと商談を行うことになったのです。当日は、メーカーさんが様々な料理を目の前で冷凍したものを再加熱し、試食させてくれました。サクサクの天ぷらや、みずみずしい煮物を味わいながら『この再現性があれば、今ある課題が一気に解決できる!』と確信しました。
冷蔵品・冷凍品のラインナップが充実したことで、銀座アスターは販売チャネルを拡大。オンラインショップが充実し、全国のお客様に銀座アスターのお料理をお届けすることになりました。
プロジェクトがスタートして約半年が過ぎた頃、オンラインショップでの冷蔵惣菜の販売がスタート。当初は饅頭製品や紹興酒など、販売できる商品が限られていましたが、店頭には餃子や焼売といったデリカショップでも人気を博していた点心類や、海老のチリソース煮、酢豚、ふかのひれスープといった本格レストランの味をオンラインショップでもお届けできるようになりました。オンラインならではのギフト商品なども企画したところ、全国のお客様からご注文をいただけるようになっていったのです。さらに、2022年6月から『急速凍結機』の導入で、これまでの冷蔵惣菜を冷凍惣菜へリニューアル。
2022年8月には、松屋銀座さまの冷凍食品専門ショップ『GINZA FROZEN GOURMET』に銀座アスターブランドの冷凍品が並ぶことになりました。
松屋銀座さまからお声掛けいただいたことは、非常に大きな出来事でしたね。私たちが1から手探りで作り上げてきた商品のおいしさが認められ、テレビ・新聞などのメディアにも取り上げていただき、より多くのお客様に知っていただくことができ、大きな達成感を味わうことができました。また、これをきっかけに売上もますます拡大していくことになったのです。
銀座アスターは、以前から自社工房『匠工房』で、麺や肉まん、月餅などを手作りしていました。テイクアウト&通信販売事業が軌道に乗ると同時に、老朽化した工房の新設&移転プロジェクトも本格化していきました。
企画・開発担当者は、商品開発のかたわら、さらに大規模なミッションに取り組んでいました。それが、2024年1月に竣工した新工房『匠工房』の立ち上げプロジェクトです。立ち上げと言いつつ、実質は建築プロジェクトのようなもの。私がプロジェクトに着手した時には、まだ建物どころか建物の設計図すら存在せず、現地には更地が広がっているだけだったのです。建設会社さんや設計事務所さんにご協力いただきながら、新工房の間取りなどを1から構築していきました。生産棟と事務棟を完全に切り分け、衛生面をしっかり確保しているのが最大の特長ですね。設備のレイアウトや導線などもすべて1から考え、機能的で働きやすい仕事環境を整えたつもりです。『匠工房』がスタートしたことで、銀座アスターのテイクアウト&通信販売商品はさらに充実。今後もブラッシュアップを重ね、ラインナップを拡大させていきたいと考えています。
急速凍結機
冷凍惣菜
冷凍惣菜(パッケージ)